ゴジラ-1.0

2023年11月公開。日本での『ゴジラ』としては『シン・ゴジラ』以来7年ぶり、30作目、ゴジラ生誕70周年記念作品と銘打たれている。実際には1954年の1作目から70周年となる2024年公開はモンスターバースシリーズの『ゴジラxコング 新たなる帝国』に取られてしまい、同じ年に日米でゴジラ映画を公開する事ができない契約になっていたため、1年前倒しとなったとされる。だったらVSシリーズ時代のように12月公開の年跨ぎの正月映画扱いにすれば『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年12月公開)を40周年扱いにした時と同じ感じになったのに…。

監督は『ジュブナイル』『リターナー』『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『STAND BY ME ドラえもん』シリーズなどで知られる山崎貴。ファンである事を公言しており、2004年『FINAL WARS』以降しばらく新作が制作されていなかった時期の2007年の『ALWAYS 続・三丁目の夕日』冒頭では登場人物の想像上の場面としてフルCGでわずかにゴジラを登場させたこともあった。

これまでのゴジラ映画は基本的に公開時点での"現代"が舞台で、例外的に『怪獣総進撃』が当時から30年後の1994年頃の近未来設定、『ゴジラVSキングギドラ』でタイムマシンに乗って1944年のラゴス島に向かってゴジラになる前のゴジラザウルスを転移させるエピソードはあったが、今作は時代劇となっており、1945〜1947年が舞台になっている。1954年の1作目より過去しか描かれないのは史上初となるが、今作は1945年始まりとなっているため前述のように『ゴジラVSキングギドラ』で主要人物がタイムマシンで訪れた1944年が作中最古というのは守られた。また同作でも1944年ではまだゴジラザウルスなので、ゴジラが1954年より前に出現した設定は史上初である。

公開当初は『シン・ゴジラ』を上回る勢いで大ヒットしたが『シン・ゴジラ』の異様なロングランには及ばず最終的な興行成績では20億近い差で及ばなかった。それでも2023年の国内の実写映画ではNo.1となった。

神木隆之介と浜辺美波は4〜9月まで放送されていたNHK朝ドラ『らんまん』で主人公夫婦役で共演したばかりだったが、今作の方が先だったと語っており、今作の撮影の後に『らんまん』だった模様。

 

1945年終戦間際、特攻隊員の敷島浩一(神木隆之介)は零戦が故障したとをついて大戸島の基地に着陸。整備兵の橘宗作(青木崇高)とは顔見知りで飛行機に何の故障も無い事を怪しまれるが、そんな中、島で伝説となっていた15mほどの恐竜のような呉爾羅(ゴジラ)が出現。整備兵たちが攻撃して刺激したため次々に殺される大惨事へと発展してしまう。この中で戦闘機を操れるのは敷島だけだったため、橘は敷島の乗っていた零戦の20ミリ砲を使えるのはお前だけだからやってくれと頼む。しかし呉爾羅はどう見ても銃撃した整備兵たちを狙い打ちにして殺しにかかっており、20ミリ砲で倒せるかも不透明だし、ヘタに刺激したら真っ先に狙われかねない状況。そもそも特攻が嫌で逃げてきた敷島はビビりまくりで撃つことが出来ない。吹っ飛ばされて攻撃に加わらなかった橘以外の整備兵は全員無謀にも攻撃に参加したために狙われて全滅、敷島はそのまま吹っ飛ばされてしまったが。結局攻撃せずに吹っ飛ばされただけの橘と敷島の2人だけが生き残った。この事で敷島は橘に激しく恨まれる事となった。結果的に"ヘタに刺激しない、攻撃せずに隠れるか逃げる"が生き残るための正解ではあった。

そして戦後、東京の自宅に帰還できた敷島だったが、空襲で両親は死んだと隣人の太田澄子(安藤サクラ)に聞かされ、さらに澄子の家族も全滅してしまっていたため、ノコノコ生き残って帰ってきた敷島に冷たい。闇市を彷徨っていた敷島は赤ん坊を抱えて逃げ回る大石典子(浜辺美波)に突如赤ちゃんを一時預けられ、再合流した際に赤ちゃんが実の娘ではなく、空襲時に母親らしき見知らぬ人に託された孤児である事、典子も両親を亡くして行き場がない事を聞かされ、そのまま敷島の家で緊急避難的に同居する事になる。当初は冷たかった澄子だったが、明子の存在もあり、徐々に態度が軟化して世話を焼いてくれるようになっていった。さらに当初苦しかった生活も敷島が米軍の戦争中に残した機雷の撤去作業をする仕事についた事で改善。機雷の撤去作業は新生丸艇長の秋津C治(佐々木蔵之介)、乗組員で出征しなかった水島四郎(山田裕貴)、元技術士官の野田健治(吉岡秀隆)との4人組で良好な関係を築いていき生活は安定していく。

1946年、米軍の核実験に巻き込まれた呉爾羅はその影響で50.1mに巨大化してゴジラ化。やがて日本近海に出没するようになっていった。1947年になり、明子は歩けるくらいに成長し、敷島と典子と明子はいつしか家族のような存在になっていた。しかし特攻から逃げた負い目や呉爾羅からも逃げた負い目から典子の好意に対して踏み出せずにいた。

そんな中、ゴジラ足止めを命じられた4人はゴジラに遭遇。回収していた機雷での攻撃は効かず、なんとかギリギリで逃げ回っていたところ、シンガポールから戻ってきた戦艦「高雄」が到着して攻撃を開始するが熱線であっさり粉砕されてしまう。4人だけはなんとか生き延びて帰還するも、ゴジラはそのまま東京を襲撃。典子も巻き込まれてしまい、乗っていた列車がゴジラに掴まれ、転落寸前で空中からなんとか海へ飛び込んでかろうじて助かった。そして典子は助けに来た敷島と合流。しかしゴジラが国会議事堂を吹き飛ばした熱線の余波が2人を襲い、咄嗟に典子が建物の陰に敷島を押し込んだおかげで敷島は無事だったが典子は吹き飛ばされて行方不明(実質死亡)となってしまう。

敗戦直後で占領下で自衛隊もない状態の国は機能せず民間の力でゴジラ打倒を図り、作戦立案者として参加する野田に誘われた失意の敷島も作戦参加を決意。野田が立案したのはフロンガスの泡で包み込むことで浮力を奪いってゴジラを深海まで一気に沈めて急激な水圧の変化でダメージを与えて破壊するというものでこれを第一次攻撃として倒せなかった場合の第二次攻撃としてあらかじめバルーンで覆っておいて深海で大きな浮袋[を膨らませて海底から海上まで一気に引き揚げ、今度は凄まじい減圧を与えて破壊するという「海神(わだつみ)作戦」だった。

敷島は飛行技術を生かして残っていた「震電」のパイロットとして参加する事を決め、「震電」の整備を橘に依頼。行方不明の橘を探すためにわざと橘を怒らせる嘘の情報を流して橘をおびき寄せ激怒する橘にぶん殴られつつも真剣な謝罪とお願いで説得するという捨て身の行動に橘は整備を引き受けるのだった。

犠牲者を1人も出さないで作戦を完遂したいという野田の意向もあって、苦労しながらも犠牲者を出さずに第一次攻撃を成功させ、置いて行かれた水島が援軍を連れてきた事で第二次攻撃も成功。しかしゴジラが自壊しきらず、窮地に陥ったところで敷島が特攻。橘は出発前に脱出装置の存在を敷島に教え、生きて帰るように言っていた。これにより「震電」は失われたがゴジラを倒す事には成功し、敷島も帰還。

帰港すると澄子が典子生還の知らせを受け取っていた。明子と共に病院に駆け付けた敷島に典子は戦争は終わったのかと問い、抱きあってハッピーエンド…のはずがどう考えてもあの状況で典子がちょっと包帯グルグル程度で生還しているのは不自然であり、典子の首元にはゴジラの再生細胞が寄生したかのような黒い染みが広がっていた…。そして海底ではゴジラの心臓が鼓動していた。

 

監督が2001年の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の影響を受けている事を公言しており(内容はほとんど忘れていて最初から意識していたわけではないが出来上がってみたら「結構な影響下にあることが知らず知らずのうちに…」と語っている。自壊したはずのゴジラが心臓だけで生きているのを示すラストシーンなんかは確かにそのまま。ただ典子の黒い染みの方は当初から考えていたわけではないらしく、典子が生きていて終わる結末に変えた事でその理由付けとして設定し、撮影時点では何かに使えると思って首元の映像を撮っておいただけだったため、出演者も知らなかったというくらい後付けだったらしいが、最終的にはゴジラ細胞だと監督自ら明言している。

余韻まで含めて新たなる『ゴジラ』としてほぼ完璧に近い1作だと思う。『シン・ゴジラ』は新要素が強すぎたところはあったが、今作は基本設定を生かしつつもよりゴジラっぽい一般向けのエンタメ作品として原点回帰を果たしている印象。

気になるところでは初代のオマージュ的に列車が襲撃される場面で典子が遭遇、列車内でしがみついたまま空中で危機に陥るもかろうじて下が水面になったタイミングで飛び込んで助かるという大きな見せ場で生き延びたばかりの典子がその後すぐに退場してしまう事。この時点で1時間ほどしか経過していない。本作2番手クレジットのヒロインが半分ほどで退場してしまい、結果映画全体の半分以下の出番しかないのはいくら最後に生還ENDとはいえ早すぎる感は否めない。そして典子が退場すると残る女性は隣人の澄子、幼女の明子の2人だけになってしまい、物語は男だけになってしまう。ただこの時代に女性が作戦に参加している方が不自然になってしまうし、かといって典子を残すと待っている立場の女性というテンプレートで出発前にラブロマンス風のシーンを挟んだりして時間を取られるし、昨今の平等ムーブから変な批判の声が上がりかねないしで、結局最初から登場人物は男ばかりにして振り切ってしまうのが最適ではあったのかもしれない。

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